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2017.7.22

CDをリリースしたということ

知る人ぞ知るが、自分はFrascoという音楽ユニットをやっている。

二年前に飲み会の席で適当に民族楽器をチャカチャカやっていたら、「バンドをやりたい」と声をかけてくれた女の子がいた。峰らるだった。

そんなわけで偶発的に始まったFrascoというプロジェクトだったが、二年間活動していく中で色々な人と出会い色々な物事が起こりついにCDを全国リリースするに至ったのだった。この間のストーリーは壮大過ぎるのでめっちゃ割愛する。

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CDをリリースすることなんてもちろん人生で初めての経験だった。

全国のタワーレコードやヴィレッジヴァンガードで自分達の作った曲が売られている。
見知らぬ誰かが税込1080円をレジで払って買って聴いてくれている。現実味が全くなかった。「現実味」。そう、現実には「味」があるのだ。今、完全に味覚が狂っている。

リリースにあたり、この数ヶ月間はかなりドタバタしていた。
配信でお世話になっているPLAY TODAYはフィジカルのリリースはやっていない。「それならやってみようか」と自分達でレーベルを立ち上げてやってみることになったのが発端だ。

アートワークをはじめデザイン系の業務は峰さんが全部やってくれたので、自分は営業やPRを中心に動いた。

音楽的には曲作り(バック)を自分がやり、ボーカル(フロント)は峰さんなのだが、運営になるとポジションが逆転するところがFrascoの面白いところだ。

峰さんは自分とは性格も得意/不得意分野も真逆なので役割や作業を完全に分担できて良かった。This is 適材適所 Style。

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6月にリリースパーティーと称して大阪、福岡ツアーを行い東京でもライブを行った。

ツアー初日、大阪には夜行バスで向かう予定だった。
金曜日、仕事が終わり着替えや荷物を取りに一度帰宅するも、家の前で立ち尽くした。

鍵がない。。。

そういえば、朝、家の中に財布を忘れたのだった。鍵は財布の中だった。

新宿のバスターミナルへ集合する時間は迫ってきている。このままだと間に合わない。

二階の窓の鍵が開いていることに気づき、雨樋を使って壁をよじ登り中に侵入した。

バスには間に合ったが、一生分の*テストステロンが出たのではないかと思うくらいの瞬間だった。

間抜けなきっかけだったが、結果的にホルモンはドバドバだ。この一瞬でヒゲとか一気に濃くなったんじゃないだろうか。

注)*男性ホルモンのこと。どうやらスリルを味わったり冒険したりすると分泌されるらしい。

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ライブには沢山の人が協力してくれて、沢山の人が観に来てくれた。今思えばどこか他人事のような、自分のことではないような日々であった。

大阪と福岡は弾丸だったが、自分の知らない街に行き、知らない人達と出会った。みんな自分達を歓迎してくれた。CDやライブも好評だったがどこかふわふわした感覚は拭えなかった。

福岡から東京に帰って来て、次の日から仕事が始まり、また満員電車に揺られて通勤を開始した。心を何処かに置いて来てしまったような感覚だった。心ここにあらず。

味のなくなったガムをいつまでも噛み続けているように未だにツアーの思い出をしがんでいる。(早くペーッしなさい)

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夏が来て、1st CDに関連するアレコレは落ち着いたが、もうイソイソと次のことに向けて動いている。

本業の傍らでの音楽活動は忙しいが、スムージーのように濃厚で栄養満点だ。充実している。

自分達の作った曲がもっと沢山の人の耳に届いてくれたら嬉しい。

壁は登りたくないが、また色々なところへ行ってライブがしたい。
そんな風に遠くへ想いを馳せる。東京都内ローカルなカフェで、土曜のアンニュイな昼下がり。

文:タカノシンヤ/絵:峰らる